wattsのノート−いろいろな本のノート

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2008/12/25 感想を書きました。


「おひとりさまの老後」上野千鶴子 著 出版社:法研 2007年 7月12日発行

50歳を迎えようという私は、そろそろ老後のことが気になる。加えて、いわゆる社会不安障害をかかえて、パート・アルバイト暮らしの人生、男性の独身暮らしを続けて、「おひとりさま」にも該当すると思い、関心を持った。「おひとりさま」というのが、ちょっと流行語っぽい用語であることもぼんやりとは知っていたのだが、この本を注文して、配達を待っている間に図書館で「男が知らない「おひとりさま」マーケット」牛窪恵著、日本経済新聞出版社という 2004年に出た本をちょっと見てみた。私が思っている以上に、30歳代、40歳代の独身女性のことを特に指しているらしいことを知った。そして、この本も女性のことを中心に書かれた本であった。しかし、一般的に老後について考えるのに参考にはなった。

著者が社会学の先生であること、おおまかなポジションについては知っていたから、最初「パラサイトシングルの時代」のような社会学的解説書ではないかと思っていた。しかし、書店で手に取って目次を見てみると、わりとハウツー書らしい印象もあって、役に立つかも知れないと買ってみたのだ。買って読んでみると、ハウツー書というのでもなかった。老境を迎えようとする著者が自身の問題として、老後に対する問題を整理、住、コミュニケーション、金、介護、死ぬ時と死後と、章に分けて、実際的な知見を述べ、情報を提示する。

著者の文章からうかがえる、古い日本の国家家族的なしがらみから離れて個人が独立した市民社会を生きるという風は、私が憧れた生き方であった。私自身はそううまくは生きてこれなかったし、著者のちょっと男性に厳しくドライに割り切るありかたには、多少抵抗を覚えながらも、いろいろな立場にある個人の心構えと準備しておくこと、社会を変えていかなければならない部分について示唆のある本であった。

この本の、死ぬ時と死後とについて書かれた最後の章を読んで感じたのは、私は「社会不安障害をかかえて」と書いたけれど、それでも若い頃は親元を離れて大学に通い、一人暮らしも長い。なるようになると、一面平気に構えていた。それがいつの間にか、いろんなことについて、おじけづいてしまっているのに気づいた。それから、やはり、その章、孤独死するのは孤立した高齢者、友人ネットワークがあれば「せいぜい死の瞬間に看とる家族がいない、という程度のこと。」とある。老後について、まず欲しいのは、この手の相互に助け合うことが出来るつながりだ。老後だけでなく、社会不安障害により、ときには、ひきこもりに近い生活を送ってきたような私は、似たような立場の人たちが助け合えるつながりがあればどんなにいいだろうと感じてきた。ところが、なかなかないのである。インターネットもかなり発達してきたけど、こういう相互に助け合うネットワークということに関しては、これからネットも活用して、どんどんと実践的取り組みが行われていかなければならないだろう。

インターネットといえば、本の前半に石垣島に移住した書と篆刻をたしなみ、パソコンは使わないという人の話が出てくるので、なんとなく著者はパソコンやインターネットについてあまり肯定的ではないのだろうかと感じたが、本の中ほどになると、障害者用ソフトの話から、高齢者は ITをおおいに活用しようという話が出てくる。現代日本の一線の学者の本なのだから当然といえば当然なのだ。

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